私は以前のブログで、3Dプリンタでネジを作るブログをご紹介させていただきました。
このときは非常に大きなねじを作成したため問題なく作れましたが、
作成できる形状やサイズには制限があります。
また、仮に作成しても樹脂のため強度が不足しており、
3Dプリントで作ったねじに市販の金属製ねじを使うと、ネジ山がつぶれてしまい固定できません。
そのため、3Dプリンタでねじを作るのは難しいのが現状です。
そこで今回は、3Dプリントパーツを金属性のねじで固定する場合に役立つ
インサートナット についてご紹介したいと思います。
インサートナットとは
「インサートナット」とは、主に樹脂や木材などに埋め込んで使用するナットのことです。
ネジを直接樹脂や木材にねじ込むのではなく、インサートナットを取り付けることで、
ネジの締結強度を高めたり、繰り返しの着脱にも耐えられるようになります。

今回はこちらのM4の 5.4mm × 4mmサイズのものを熱圧入で3Dプリントパーツに
埋め込んでみたいと思います。
造形するデータについて
今回、造形に使用するのはシンプルな3つの穴が開いたブロック形状です。

3つの穴に対してインサートナットを熱圧入します。
この設計で注意してほしいポイントが 穴の深さ です。
熱圧入を行うと、周囲の樹脂が溶けて流れ込み、ねじ穴が埋まってしまうことがあります。
そこで今回は穴の深さによってどのような違いが出るのかを確認するために、
3種類の穴を用意しました。
- インサートナットの長さと同じ深さ(4mm)
- 樹脂が逃げるスペースを確保するために +1mm 深くしたもの(5mm)
- さらにもう +1mm 深くしたもの(6mm)
この3種類を比較しながら、実際の結果を見ていきたいと思います。

プリントする
今回は下記のような造形条件でプリントを行います。
材料 : PLA
ノズル径 : 0.6mm
積層ピッチ : 0.3mm
造形速度 : 120mm/s
インフィル : 20%

造形は約23分ほどで完成しました。
さっそくインサートナットを埋め込んでいきたいと思います。
インサートナットを埋め込んでみる
まずは 深さ4mmの穴 にインサートナットを埋め込んでみます。
熱圧入には、はんだごて を使用しました。
作業のコツとしては、
インサートナットを できるだけ垂直に押し込むこと です。
少しずつ押し込みながら微調整すると作業しやすいと思います。
ナットの内側を確認すると、やはり溶けた樹脂が流れ込んでおり、
ねじ穴が部分的に塞がってしまいました。

次に、先ほどより 1mm深い穴(5mm) にインサートナットを差し込んでみます。
すると、先ほどよりも きれいに穴に収まりました。
しかし、まだ溶けた樹脂の逃げ場が十分ではないため、先ほどよりは少なくなったものの、
ほんの少し、ナットの内側に樹脂が入り込んでしまいました。

最後に、さらに 1mm深くした穴(6mm) にインサートナットを差し込んでみます。
すると、最後まで差し込んでも樹脂がナットの内側に入り込むことなく、
きれいに圧入することができました。

3つの穴の内部

まとめ
今回は、3Dプリント部品に インサートナットを熱圧入する方法 についてご紹介しました。
インサートナットを埋め込む際には、穴の深さをナットの長さの約1.5倍 程度にすると、
樹脂の逃げ場が確保でき、きれいに圧入できることが分かりました。
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