皆さんは、3Dプリンタのサポートについて悩んだことはありませんか?
サポートはオーバーハングやブリッジ部など中空形状の部分を生成するために必要となる重要な要素の一つです。

しかし、サポートは取り外しに苦労したり、使用して造形した部分は品質が低下するなど、
多くのユーザーの悩みのタネであることもまた事実です。

本ブログでは、3Dプリンタの活用において重要な設定であるサポート材を、綺麗かつ取り外しやすくするための設定についてご紹介します。

サポートには、スライサーごとに様々な設定項目が用意されていますが、
今回は、PrusaSlicerを使った設定方法についてご紹介します。

使用するモデルについて

最適な項目の値を見つけるために、下記のようなテスト用のモデルを作成しました。

今回使用したモデルのデータを使いたいという方はこちらからDLしてください!

このモデルは、造形中に必要となるサポートの状態を確認するためのオブジェクトです。

①と②は、テーブルから直接サポートが生成されるときのサポートの状態を確認することができます。局面に造形するとき(①)と、平面のとき(②)の2パターンを用意しました。

③と④はオブジェクトからオーバーハング部にサポートが生成されるときの品質を確認することができます。

③は曲面から曲面へサポートが造形されるようになっています。
④は平らな造形物上からサポートが生成されます。一見テーブルから生成されるものと大差がないように思えますが、モデルから造形される場合とテーブルから造形される場合では、結果が異なることがあります。

最適な設定を見つけることで、他のモデルを造形するときにも活用できます。

造形条件について

今回は下記の設定を初期値として検証を進めます。 最適な値はプリンタによって異なりますので、ご自身のマシンに合った設定を探してみてください。

フィラメント:PLA
温度:205℃
ベッドの温度:50℃
射出率:0.93%
トップコンタクトZ距離:0.1mm

ボトムコンタクトZ距離:0.1mm
(サポートとモデルの間の距離)

サポートの設定において重要なポイントである上記の項目の修正を中心に検証を行っていきます。
一度で多くの箇所の設定を変更すると、モデルに起こった変化がどの設定によって影響を与えたのかわかりずらくなるため、1回で複数の設定変更を行わないことが大切です。

検証の様子(一般的な方法)

一回目に造形したモデルこちらです。

気になる箇所はいくつかありますが、初めに調整したのがサポートとオブジェクトの隙間です。
現状ではモデルとサポートの間に隙間がほとんどないため、サポートとモデルが強力にくっついてしまい、サポートの取り外しが困難です。

そこで、 次の造形では、サポートとオブジェクトの隙間を増やします。

トップコンタクトZ距離:0.1mm → 0.2mm
 ボトムコンタクトZ距離:0.1mm → 0.2mm

結果

多少改善されたものの、モデルと接触する部分のサポートは取り外しが難しいです。

そこで次はノズル温度の設定を変更することにしました。

③ノズル温度 : 205℃ → 200℃

これは、ノズルの温度が下げることで、吐出されたフィラメントが冷却されるまでにかかる時間が短くなり、層同士の接着が抑えられます。これによりサポートとモデルが取れやすくなることがあります。

結果

3回目の検証後、結果が少し改善され、サポートが取りやすくなりました。
ようやく、オーバーハング部分の形状を確認することができました。
しかし、などはまだ取り外しが難しいです。

そこで

④射出率 : 0.93 → 0.91

に変更しました。射出率を下げることで積層間の接着力を下げる狙いがあります。

結果

サポートの取り外しに必要な力は少なくなりましたが、今度はオーバーハング部分の形状が再現できない部分ができていました。

ことで次は、インタフェースレイヤーの造形速度を下げて造形を行います。

⑤インターフェースレイヤー速度 : 40 → 15

インターフェースレイヤー(モデルとサポートの間に造形される高密度サポート)の造形速度を下げることで、フィラメントの押し出しが安定し、オーバーハング部分の品質向上が図れます。

結果

インターフェースレイヤー速度を落としたことで、形状を作成することができました。
次の課題は、モデルの上から生成されるサポート(③④)がサポートとしっかりとくっついており、剥がすことが難しいです。
そこで、再度サポートとオブジェクトの距離を修正しました

トップコンタクトZ距離:0.2mm → 0.22mm
 ボトムコンタクトZ距離:0.2mm → 0.22mm

この結果…かなり改善が見られました!
オブジェクトから生成されるサポートも外しやすくなり、表面もキレイになりました。

この後、私は追加で何度かノズル温度や微調整を行い、最後に下記の造形条件に決定しました。

最後の造形条件

フィラメント:PLA
温度:205℃
ベッドの温度:50℃
射出率:0.91%
トップコンタクトZ距離:0.24mm

ボトムコンタクトZ距離:0.24mm
インターフェースレイヤー造形速度 : 8mm/s

これらの造形条件で最後に完成したモデルがこちらです。

初めに造形したモデルよりもきれいに造形できています。

このように最適なサポートの設定を導き出すには何度も造形を行い、
少しずつ調整を重ねていくことが重要です。


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