今回は1つのノズルに2つの材料を使用したモデルを作成してみることにしました。
2つのプリントヘッドを搭載した機種ではなく、
1つのプリントヘッドの機種を使用する場合の方法についてご紹介します。
造形条件
ノズル温度 : PLA210℃ / TPU220℃
ノズル径 : φ0.4mm
積層ピッチ : 0.15mm
テーブル温度 : 50℃
造形スピード : 50mm/s
インフィル充填率 : 20%
①造形の途中で材料交換を行う
1つめの方法がもっとも簡単な方法である、造形途中に材料交換を行う方法です。
単純な方法ですが、特別な設定が必要なく行うことができます。
しかし、任意の位置で材料交換をすることが難しいというデメリットがあります。
まずTPUを使用して板状の土台をプリントし、その上にPLAで印刷しました。途中に材料交換を行い、
ノズルの温度を10℃上げて造形を再開しました。
完成したモデル
見た目は非常に美しく仕上がったものの、少し触ると簡単に2つのモデルに分離してしまいました。
この造形結果から、2種類の樹脂の接触面積が小さいことが原因ではないかと思いました。
接触部分が外周部分とインフィル部分に限られているため、面と面で接触すれば改善されると思いました。
②2つのモデルを別のパーツとして作成
次に、2つの異なるファイルを使ってモデルを印刷することにしました。
今回の形状を2つに分けて、板状のモデルとダンベル上のモデルに分けて2度造形します。
まずPLAを使って210℃の設定で印刷し、基盤となる部分(板形状)を作成しました。
その後、220℃でTPUをPLAの板の上から印刷します。
これには、より高温のフィラメント(TPU)を低い融点を持つフィラメント(PLA)の上に重ねることで、両方の材料が溶かされ、層間接着をより強固にできるのではないかと考えました。
PLAで造形する部分
TPUで造形する部分
しかし、ここで気になるのが「どうやって印刷するのか?」ということだと思います。
今のまま造形してしまうと、2回目の造形でZ軸は再びテーブルの上から造形が始まるため、板とノズルが接触してしまいます。
これを解決するために、以前ご紹介したG92のGコードを使用する方法を応用します。
やり方
①まずはPLAで板のモデルを作成し、造形します。
②つぎに、TPUのダンベル状のモデルを用意し、Gコードに書き出します。
③かきだしたGコードの下記の部分を、Gコード(G92)を使用してその位置でノズルが既に印刷されたPLAのプレートに触れない状態を作ります。そして、この位置をゼロとして設定し、以降のプリンターの動作がこの点から始まるようにします。
これでPLAで作成した板の厚み分浮かした状態でスタートさせることができます。
注意点
プリンタにはスライサーで設定された「計算上の限界値」と、実際の「物理的な限界値」の2つがあります。今回の場合、物理的な限界を変更しましたが、計算上の限界値は変更していません。
もしプリンターの最大高さで印刷を行う場合、この点に特に注意が必要です。限界値を正確に計算しないと、プリンターの故障を引き起こす可能性がありますので、慎重に設定してください。
完成したモデル
先程と同じくモデルは綺麗に完成しました。
しかし、面で接着したことで、先ほどの方法より強くなったものの、やはりTPUとPLAの接着性の問題なのか簡単に2つに分かれてしまいました。
これはまだまだ検証が必要そうです。
結論
今回、ご紹介した方法を使用することで2つの材料を使って1つのモデルを作成できるということは分かりました。
しかし、今回の場合はPLAとTPUという異なる性質の材料の場合、積層間の接着がうまくいかないため難しいということもわかりました。
同じ材質で色を変えるなどの場合だと、うまく造形できると思いますので参考にしてください。
また、今回のPLAとTPUを使ったモデルの作成は新たな方法を考えてリベンジしたいと思います!
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