皆さんは3Dプリンタで造形をしている中で、モデルの糸引きに困ったことはないでしょうか?
このような糸引きの大きな要因としてリトラクションの設定があります。
もしプリント中に糸引き やプラスチックのが表面に残る問題に悩んでいるなら、
まずはこのリトラクション設定を見直す必要があります。
リトラクションとは?
リトラクションとは、ノズルが移動する前にフィラメントをエクストルーダー内に引き戻すプロセスのことです。この操作によって、エクストルーダー内の圧力による材料の漏れを防ぎます。
リトラクションは、FDM方式3Dプリンタの重要な機能の一つであり、モデルの表面品質を大きく左右します。
リトラクションが適切に設定されていない場合、以下のような問題が発生します:
- モデル間に糸のような細い樹脂が残る。
- モデルの表面に余分な材料が滴り落ちる。
- 細部が汚く仕上がる。
リトラクションは特に、複数の独立したパーツを含むモデルや、
細かいディテールを持つモデルのプリントにおいて特に重要です。
また、糸引きは使用する材料の種類によっても具合が異なります。
フィラメントの開封から時間がたち、湿気によって材料が吸湿してしまっているような材料も
糸引きが発生しやすいです。
PrusaSlicerにおけるリトラクション設定の主な項目
PrusaSlicerでは様々な設定が豊富に用意されていますが、
リトラクションに関する設定の中で、下記の5つの設定に特に重要です。
- リフト高さ
ノズルが移動中に少し上昇することで、モデルに接触しないようにします。
複雑な形状のモデルに特に役立ちます。 - リトラクション長さ
フィラメントがエクストルーダー内に引き戻される距離を指します。- 距離が短すぎると、材料が漏れる原因になります。
- 距離が長すぎると、材料が詰まる可能性があります。
- 引き込み速度
フィラメントを引き戻す速度を調整します。- 適切な速度は、効率的な引き戻しを可能にし、フィラメントの損傷を防ぎます。
- 適切な速度は、効率的な引き戻しを可能にし、フィラメントの損傷を防ぎます。
- 吸い込み後の最小移動量
小さなディテール部分での不要なリトラクションを防ぎ、全体的な効率を向上させます。 - 吸い込み中にワイプ
フィラメントを引き戻す際にノズルを「拭き取る」機能です。これにより、余分な材料を取り除き、表面をきれいに仕上げます。
注意すべき点
PrusaSlicerの中にリトラクションの設定が2つ用意されていることをご存じでしょうか。
1つ目はプリンターの設定で、2つ目はフィラメントの設定です。
一件両方同じに見えますが、は実際どちらを有効にする必要があるのでしょうか?
それとも同じ設定を入れる必要があるのでしょうか?
実は、そうではありません。
下記では実際に、異なるリトラクション値を設定し、どちらの設定が反映されるのか確認してみました。
フィラメントの設定ではリトラクションの長さを「5mm」に、
プリンターの設定では「2mm」にしました。
フィラメント設定
プリンター設定
この設定でスライスしたGコードを確認すると、リトラクションが行われる際、E軸の座標が「-5mm」されていることから、リトラクションが5mm分行われたことがわかります。
この結果からフィラメント設定が優先されていることを示しています。
フィラメント設定でリトラクションが無効化にした場合、スライサーはプリンター設定の値を適用します。
どちらの設定にもリトラクションの値が設定されていない場合はリトラクションは行われません。
そのため、有効にするのはどちらか一方の設定で大丈夫です。
適切なリトラクション設定のメリット
- モデルの表面がきれいに仕上がる
糸引きや滴がなくなることで、仕上がりが大幅に向上します。 - プリント時間の短縮
過剰なリトラクション操作を抑えることで、プリントプロセスが効率的になります。 - 素材に対応しやすい
リトラクションを活用することで、TPUなどの柔軟素材やABSのような高温素材も問題なく扱えます。
まとめ
リトラクションは高品質な造形を実現するために必要不可欠な設定です。
プリンターや素材ごとに適切な設定が異なるため、リトラクション設定を理解することで、特定のプロジェクトに合わせたカスタマイズが可能になります。
特に細部が求められるモデルでは、その効果が顕著に現れます。
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