私が、3Dスキャナを活用している中でよく聞かれるご相談の一つが、
- 「3Dスキャンしたデータをそのまま3Dプリントできますか?」
- 「スキャンしたデータをすぐに造形したいのですが可能でしょうか?」
といった内容です。
しかし、3Dスキャンで取得したデータは、そのまま3Dプリンターで造形することを前提に作られているわけではありません。
そのため、私は必ず「そのままの造形はおすすめできません。適切な編集・修正作業(リバースモデリング)が必要です」とお伝えしています。
今回は、スキャン直後の未加工データをそのまま3Dプリントした場合と、リバースモデリングを行って編集したデータをプリントした場合で、どのような違いが生じるのかをご紹介します。
スキャンするワークについて
今回スキャンするワークには下記のようなこのようなものを用意しました。

お箸入れのケースです。
今回は、このケースをスキャンしてみたいと思います。
スキャン
早速、Crealityの3Dスキャナ「Sermoon S1」を使用してスキャンしていきます。
回転テーブル上にターゲットマーカーを貼りつけてスキャンします。
今回の形状は、平面的な部分が多く、特徴形状が少ないワークのため、
複数回スキャンした場合、位置合わせが難しくなります。
そのため、ワーク表面に特徴のある形状を張り付けて、位置合わせ時に使用できるようにしました。

早速、スキャンしていきます。
テーブルを回しながら全面をスキャンしました。
固定部分や内側のアンダーとなる部分がスキャンできなかったため、
角度を変えて合計3回スキャンしました。



次にこれらのデータの結合を行います。
結合の詳細については以前のブログで解説しておりますので、
そちらをご覧ください。
先の工程で取り付けた特徴形状を使用して位置合わせを行います。

3つのデータをマージした結果がこちらです。

まだ、角の一部に穴が開いてしまっている状態です。
3Dプリント時には穴が開いてる状態だと造形ができないため、穴は事前に埋めておく必要があります。
ですが、その前に、モデルの位置合わせに使用した特徴形状部分を削除します。


このように、データ上の不要な部分を選択し削除します。
こちらもデータの穴となるため、穴埋めを行います。

穴埋めの方法については、以前のブログで詳細をご紹介してますので、
そちらをご覧ください。
そうして完成したデータがこちらです。


そのまま3Dプリンタしたらどうなるの?
3Dスキャナ、3DプリンタともにCreality製品を使用する場合、
スキャンのソフトウェアから直接3Dプリント用のスライスソフトにデータを受け渡しできます。
画面右上の共有ボタンから、Crealityのロゴをクリックします。
すると、自動でスライスソフト「Creality Print」が起動します。
起動後、

スキャンしたデータが自動でスライスソフト上に移動されます。
このとき、画面左下を見てみるとエラーが表示されています。

非多様体エッジは、3Dモデルの厚みが0であったり、体積が定義できないエッジ部分のことを言います。
こちらは、造形時に問題となりますので、データの修復を行います。
(修復)をクリックすると自動でデータが修復されます。
自動向き調整機能と回転の機能を使用して、テーブルに配置します。

さっそく、このままスライスしてみると、

次は、このように、警告が表示されました。
これは、モデルの底面がテーブルと完全に接地していないため、
浮いた状態になっており、サポート材が必要とのことです。
そのため、サポートを有効にし、再度スライスしてみると。。。

このようにスライスされました。
しかし、スライスされたデータをよく見てみると、

表面に歪な凹凸があったり、
造形される層もいびつな形状になっています。
これが、スキャンデータをそのまま3Dプリントすることが難しい理由です。
一見、平らできれいなデータに見えても、
実はいびつな形状であるということがわかります。
実際にこちらのデータを使って、3Dプリントしたモデルがこちらです。


事前のスライスデータ通りに表面が平らではなく、
いびつな段差のあるような形状でできあがりました。
予告
次回のブログでは、今回スキャンしたデータを使用して、リバースエンジニアリングを行い、
そのデータを使って3Dプリントした様子をご紹介したいと思います。
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