私は前回のブログで、3Dスキャンしたデータをそのまま造形するとどうなるのか、
実際に3Dスキャンから造形までを行い、その結果をご紹介させていただきました。

今回は、このときスキャンしたデータをリバースエンジニアリングソフト
「QuickSurface」を使用して、データの編集を行い造形した場合、
どのような違いがあるのかご紹介したいと思います。

前回の振り返り

前回は、3Dスキャンしたデータの穴埋めや表面のスムーズ化を行い、
そのデータをそのまま3Dプリントしました。

その結果、造形したモデルはこのようになりました。

リバースエンジニアリングをする

さっそく、リバースエンジニアリングを行っていきます。

Quicksurfaceを使用したリバースエンジニアリングの細かいやり方については
以前のブログで詳しくご紹介しましたので、
こちらをご確認ください。

まずは、STLデータを作成します。
Creality Scan4の画面右上のモデルのエクスポートを選択します。

STLの形式で、任意の場所にデータを保存します。

保存出来たら、QuickSurfaceを立ち上げて、
先ほど保存したSTLデータを開きます。

まずは、座標の定義を行います。
座標の定義は、「どこを原点とするか」「X・Y・Zの方向をどの軸に設定するか」を決定する作業です。
基準方向や原点が未定義の状態では、部品の位置や姿勢が決まらず、正確なモデリングが困難になります。

まずは、プリミティブの抽出をクリックして、平面を取得します。

面が作成できたら、作成した面を基準として断面を作成します。

今回はこちらの断面から取得したラインと平面を基準として位置合わせを行います。

断面のラインから

このように交差する2本のラインを抽出します。
抽出できたら、座標系の整列を選択し、原点を決めます。

先ほど作成した2つのラインの交点と、面、作成したラインのどちらかを選択することで座標系を作成することができます。

この工程でずれてしまうと、後の工程でうまくモデリングができなくなりますので、
丁寧に行って下さい。

形状のモデリング

座標系が指定できたら、形状をモデリングしていきます。
まずは、内側の縁の輪郭部分から作成していきます。

先の工程と同じように2Dスケッチから輪郭線を取得します。

このとき、スキャンしたモデルをノギスで測定しながら、モデリングすることで
より正確にモデリングすることができます。
スキャンデータに沿う用に輪郭線作成し、すべてがつながったら押し出します。
角の部分はフィレットの機能を作成することで、作成しました。

次は下の土台の部分を作成します。
同じように輪郭線を取得し、押し出して作成します。

最後に、モデル中央付近にある凹凸も再現していきます。

同じく、2Dスケッチから
断面を取得する方向を変更します。OXZ方向にすることで凹凸の形状を取得することができます。
こちらの断面にスケッチを作成します。

このように凹凸部分に沿う用に、円弧を作成して再現しました。
できたらこちらも押し出しを行い、側面の壁に当たる場所まで押し出します。

これでリバースモデリングが完了です。

最後に3つのデータを合成し、一つのデータにします。

全てを選択した状態で、CADの合成をクリックします。

すると、合成され、一つのモデルになりました。

これでデータが完成です。
最後に、データの偏差を確認してみます。

このように、モデリングしたデータとスキャンデータを比べた場合、
中央と端の部分でカラーマップに大きな差があることがわかります。

これはスキャンしたモデルが、劣化などの影響で形状が変化し、
V字に沿っていたということがわかります。

このようにモデル自体が湾曲した状態であったため、
前回、スキャンデータをそのまま造形したときに、サポートが必要になったということがわかります。

スキャンデータをそのままスライスしたときのテーブル面の様子(緑/黄緑はサポート)

こうして完成したデータがこちらです。

早速こちらのデータを3Dプリントします。

データを読み込むと、この時点で大きな差があります。
座標系を定義したことで、自動でテーブルに配置されました。
さらに、そのままスライスデータを作成してみると、

モデルの湾曲が改善されたことで、サポートが全く必要になりませんでした。
さっそく、そのまま造形してみると、

前回のモデルと並べてみると、その違いがよくわかります。

左側 : リバースモデリングを行って造形したモデル   右側 : スキャンデータを直接造形したモデル

まとめ

今回の結果から、スキャンデータをそのまま3Dプリントすると、
モデルのクオリティが大幅に低下してしまうため、そのまま活用することは難しいです。
適切にリバースエンジニアリングを行うことで、スキャンデータを最大限活用することができるようになります。


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