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光源の進化が3Dスキャナの性能向上を牽引
3Dプリンタとともに、ものづくりのプロセスに大きな変革をもたらした3Dスキャナ。近年、3Dスキャナは目を見張る進化を続けています。
その理由は『光源』とそれを受け取るセンサー類の進化とも言えます。
今回は光源にフォーカスし、その特徴を解説してまいります。

3Dスキャナ:どんな光源があるの?
一般的に3Dスキャナと呼ばれる機器は、何らかの光をワークに照射しその投影された光を読み取り解析、もしくは、反射してきた光をセンサーで受け止めワークの形状を『結像』することで3Dデータを構築していきます。
近年の光学系技術進化により様々な光源が開発され、3Dスキャナにも搭載されるようになりました。そして今、『ブルーレーザー』『近赤外(NIR)』『可視光(LED/プロジェクタ)』が、3Dスキャナの光源としてスタンダードになりつつあります。

なぜ新しい光源が採用されているの?
これまでの3Dスキャナに対してどのようなイメージをお持ちですか?
『黒系や金属は撮れない』『スキャニングは薄暗い場所で』『遅い…』などではないでしょうか?
いま、新たな光源やセンサーの採用により3Dスキャナが『不得意』とされていた様々なことが克服されつつあります。
次の章では、3Dスキャナのスタンダードな光源である『ブルーレーザー』『近赤外(NIR)』『可視光(LED/プロジェクタ)』に関して、それぞれの特徴を解説してまいります。
3Dスキャナの光源の特徴
現在3Dスキャナの光源として主流となった『ブルーレーザー』『近赤外(NIR)』『可視光(LED/プロジェクタ)』について、主な特徴をまとめてみました。
光源種別 | 波長 | 主な特徴 |
---|---|---|
ブルーレーザー | 405~480nm | ●波長が短い可視光 ●表面反射の影響や拡散が少なくノイズが少ない ●自然光と干渉しにくい |
NIR(近赤外)レーザー | 780~1550nm | ●非可視光線の赤外線としては短い波長 ●色の影響を受けにくい ●暗い場所でも届く |
可視光(LED/プロジェクタ) | 380~780nm | ●可視光であるため安全 ●比較的広範囲/高速な機種が多い ●色情報取得に強い |
01■青色(ブルー)レーザー 01 405nm~480nmと比較的短い波長の可視光線をブルーレーザーと定義されています。 02■近赤外レーザー(NIR:Near Infrared) 02 赤外線の中でも可視光線に近い波長780nm~1550nmの被可視光線で、3Dスキャナでは850nm前後の光線を構造化(パターン)投影し利用されることが多い。 03■可視光(LED/プロジェクタ) 03 対象物に構造化(パターン)光を投影してスキャンを行う際に光源として利用されています。微細なディテールの取得や精度を必要とするスキャニングに適しています。3Dスキャナに採用されている主な光源について解説
3Dスキャナに搭載されるブルーレーザーの多くは420nm前後のものが多く、その特徴として『黒や濃色に対して吸収されにくく正確に反射しやすい』。すなわち、黒や濃色の対象物をスキャンできるというメリットがあります。また、周囲光の影響を受けにくく拡散しにくい特性を持つため、屋外でのスキャンや金属ワークのスキャンにも対応することができます。
何よりも、その短波長と小さなスポット径により、高解像度のスキャンが可能になります。
対象物の色彩を捉える能力が優れているため、フルカラースキャン時も高品質なデータ取得が可能なうえ、マット調であれば黒や濃色系、金属ワークに対応する機種も存在します。また、ワンショットの取得領域も広く凹凸の多い対象物でも深く浸透する特徴を持つことから、複雑なディテールや意匠を持つ対象物の取得を得意とします。目に優しい特性と合わせて、人体や顔などのスキャンをマーカー無しで行うこともできます。
LEDは小型・軽量機に、多彩なパターン投影により整合性を高めるプロジェクタ光源は精度を求める据え置き型機種に採用されることが多い。
可視光であるため周囲光の影響を受けやすいのは否めず、黒や光沢のある対象物のデータ取得は不得意であるため、スキャン用スプレーの仕様が推奨される。また、スキャニング作業は少し暗所の方が望ましい。
それぞれの光源には長所と短所があり、得意/不得手があります。
最近ではこれらの光源の長所を「いいとこ取り」し、ハイブリッド搭載して補完する機種も現れています。
いずれにしましても、3Dスキャンを行うにあたってどのような成果物(データ)を求め、どのように活用するかを明確にしたうえで、どのような光源を搭載しているのか、そして、どのような機種を選定するのかが重要になりそうですね。