ラティス構造について

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『ラティス構造とは?』

ラティス構造って何? どんな種類があるの? どんな特徴があるの? 結局、どのラティスパターンを使えばいいの?など、ラティス構造の基本からラティス各種類とその特徴を解説します。

ラティス構造って何?

3Dプリンタの導入が広がってきたことで耳にする機会が増えた『ラティス』。
『ラティス構造』とはいわゆる『格子状』のモデルが周期的に配置され立体を形成している構造を意味します。
麺屋船出構成された一つの格子が連続した状態は空洞が生まれます。仮に、同じ形状のモデルでも、完全に中身が詰まったソリッド体に比べ軽量化を図ることができます。
もちろん、材料コストの削減や造形時間の短縮にも貢献します。

ラティス構造のメリットは軽量化だけ?

ラティス構造による軽量化は当然のメリットですが、単に軽量化だけを目的とするのであれば中空形状でも事足りてしまいます。ラティス構造のもう一つのメリットは、ラティス格子の物理的特性を活かすことで強度を持ちながら軽量化を図ることができること。
他にも、熱交換性を高めたり衝撃吸収性を持たせたりと、元材料が持つ特性を高めたりパフォーマンスを追加したりできるのも大きなメリットと言えるでしょう。

ラティス構造の色々

どんなところで使われている?

強度と軽量化を両立するというメリットから、航空宇宙産業を中心に広がり始めたラティス構造ですが、今では自動車や医療業界へ急速に広がりを見せるほか、産業機械やコンシューマ向け製品にまで活用が広がっています。
例えばラティス化されたロボットハンドは軽量化と滑り止め効果。熱交換性を利用した熱交換器。衝撃吸収性を利用したバンパーやヘルメット。柔軟性を使用したインナーソールや人体プロテクタ。日用品では自転車のサドルなどにも採用されています。
発想・工夫次第で活用シーンは無限の可能性を秘めていると言えるでしょう。

ラティスにはどんな種類がある?

ラティス=格子ということから、ラティスは線(棒状)が組み合わされた構造というイメージを持たれがちですが、実は様々な形状が存在します。
ラティス構造は大きく分けて『格子ラティス』と『サーフェイスラティス』の2種類に分類されます。
さらに『格子ラティス』は『図形ラティス』と『TPMSラティス』に分類。『サーフェイスラティス』は『ボロノイラティス』と『メッシュラティス』に分類されます。
このページでは、工業製品で多く利用されている『格子ラティス』に関して解説してまいります。


代表的なラティス形状とその特徴

3Dプリンタのラティス構造_BCC

01BCC (Body-Centered Cubic):体心立方構造

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密度が低く中空領域の多い構造になるため、材料使用量を抑え大幅な軽量化が期待できるラティス構造です。
ラティス形状の特徴から、構造体に柔軟性をもたせることができます。
X/Y/Z方向は均一な形状になるため等方性もあり、X/Y/Z方向からの負荷に対してはある程度均一に耐えることができます。
また、衝撃を効果的に分散できる構造であるためエネルギー吸収性に優れていることから、バンパーや保護パーツなどへ応用されています。

●軽量化 ●衝撃吸収性 ●柔軟性

3Dプリンタのラティス構造_FCC

02FCC (Face-Centered Cubic):面心立方構造

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BCCよりも剛性があり、より効率的に荷重を分散することができます。等方性も高いため安定した強度を保ちます。
その反面、エネルギー吸収力が低くなるため衝撃吸収性よりも剛性を求めるモデルに有効です。
また。構造密度が高くなるため同サイズの構造体の場合、BCCよりも重くなる傾向があります。
等方性もあるうえ、連続する方向への荷重・引張り強度が発揮されることがあります。

●耐荷重 ●剛性 ●引張強度 ●等方性

3Dプリンタのラティス構造_BOX

03BOX (別名:Cubic Lattice):立方構造

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単純な立方格子(キューブボックス)の繰り返しで『箱』がたくさん並んでいるような構造になっている。X/Y/Z方向からの荷重に対して均一な特性が出やすい。
ビーム(ストラット)が直線的に結合されているので高い剛性を得やすいが、BCCやFCCよりも重くなることが多いため軽量化を主目的とするモデルには不向き。
また、比強度(モデルの密度と強度の関係)に関してもBCCやFCCの方が有利になることが多い。

●高い剛性 ●単純構造でデータの軽量化

04Gyroid (ジャイロイド)回転周期極小曲面

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TPMS(三重周期極小曲面)の一種で、連続で曲がりくねった面で構成される。曲率が一定で3次元的にも均一であるため、X/Y/Z方向だけでなくあらゆる方向からの負荷に対して等方性を発揮します。
連続する曲面が荷重を分散させるため、軽量でありながら高い剛性を持つだけでなく衝撃吸収性も高い。
この荷重の分散は軟質材を利用した際の柔軟性にも効果を発揮する。
内部に連続した空間通路ができるため、流体適性による熱交換作用もあり、現在最もポピュラーなラティスといえます。
※3次元連続形状なのでサポートがなくても造形できることから、FDMのインフィルに使われることもある構造体です。

●軽量 ●耐荷重 ●衝撃吸収 ●柔軟 ●等方性 ●流体適正

3Dプリンタのラティス構造_Diamond_ダイヤモンド

05Diamond (ダイヤモンド)

05

TPMSの一種でダイヤモンドの原子配列から名付けられた構造です。Gyroidと同様、3次元のどの方向からの負荷にたいしてもほとんど異方性がなく、Gyroidよりも高剛性にるることができます。
連続する曲面構造が荷重をバランスよく分散してくれるため、軽量ながら高い強度のモデルを作ることができます。この荷重や負荷の分散により、引張強度に優れた特性を発揮します。これら優れた特性から、金属造形や粉末造形、光造形など様々な3Dプリントに対応し、航空宇宙分野でも注目されているラティス構造です。

●軽量 ●引張強度 ●高剛性 ●等方性 ●流体適性

06Primitive (プリミティブ)

06

代表的なTPMSの一種で、球体、もしくは、球状の空洞が連続的につながっているような構造で、GyroidやDiamondと同様、3次元的にどの方向からも同じように荷重を受け止められる等方性を持ちます。
Gyroidにまさるとも劣らない柔軟性を発揮することも可能で、衝撃吸収性にも優れている。一箇所でなくモデル全体でエネルギーを吸収するような性質です。
GyroidやDiamondに比べると強度や剛性は少し劣るものの、衝撃吸収性を優先したモデルにはとても有効です。
また、流体適性にも優れており熱交換器やフィルターなどにも有効な構造です。

●衝撃吸収性 ●柔軟性 ●流体適性

07FCC_Negative

07

FCC構造の接点をビームで繋ぐのではなく、本来の決勝構造のように接点に球(原子)を配置した構造を反転(ネガティブ)させたラティス構造です。FCCの構造的優位性を持ちながら、強度と流体適性を向上することができる構造体です。

08FCC XY Removed

08

FCC構造からXY平面のビームを削除した構造。
XY方向からの強度を必要とせず、更に軽量化が必要なモデルに有効です

3Dプリンタのラティス構_FCC_XZ_removed

09FCC XZ Removed

09

FCC構造からXZ平面のビームを削除した構造。
XZ方向からの強度を必要とせず、更に軽量化が必要なモデルに有効です。

10FCC YZ Removed

10

FCC構造からYZ平面のビームを削除した構造。
YZ方向からの強度を必要とせず、更に軽量化が必要なモデルに有効です。

3Dプリンタのラティス構造_FCC_Removed_XY_with_Z

11FCC XZ Removed with Z

11

FCC構造からXY平面のビームを削除し、Z軸にビームを加えた構造。
XY方向からの強度を必要とせず、Z方向の強度を増加させつつ軽量化が必要なモデルに有効です。

3Dプリンタのラティsス構造_BCC_FCC

12BCC + FCC

12

BCCとFCCをあわせた構造で、さらに強度を高めたいモデルに有効です。
但し、密度が高くなるため軽量化を主目的としたモデルには適しません。

3Dプリンタのラティsス構造_BCC_FCC_Removed_XY

13BCC + FCC XY Removed

13

BCCとFCCをあわせた構造ですが、XY平面のビームを削除することにより、XY方向からの強度を必要とせず強度を高めたいモデルに有効です。
但し、密度が高くなるため軽量化を主目的としたモデルには適しません。


■ ラティス構造化のメリット
 ●強度を保ちつつ軽量化:ラティスセルの太さや大きさを工夫
 ●通気性、冷却性:モデル内の空洞へ機体や液体を通すことで冷却効果を得られる
 ●弾力性:柔軟性のある材料であればバネやスポンジのような弾力性を発揮

■ 設計の目安
 ●最小ビーム半径(ストラット半径):04~0.5mm(造形の失敗や脆弱化の防止)
 ●ドレンホール:2mm以上(必要に応じて内部の残留材料を排出する穴が必要)
 ●ラティス密度:モデル全体に対し 20~40%

ラティス構造 代表的な特徴比較表

ラティス構造剛性柔軟衝撃吸収軽量化等方性流体適性
BCC
FCC
BOX
Gyroid
Diamond
Primitive